ダイキン工業インタビューその2|「滋賀は世界に向かって仕事をしている」と言わしめた画期的な取り組み。

これはお客様にとって本当に価値があるのか?すべての作業を問い直した先に見えてきた課題を契機に、従来の常識に大胆に挑む。

第34回第一線監督者の集い:名古屋 最優秀事例賞受賞者のダイキン工業株式会社 杉浦智行さん(滋賀製作所 空調生産本部 滋賀製造部 製造第二課 チーフ)、小倉博敏さん(滋賀製作所 空調生産本部 滋賀製造部長)、福井規仁さん(滋賀製作所 空調生産本部 製造第二課課長)に日本能率協会事務局(JMA)がお話を伺いました。(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

「滋賀は世界に向かって仕事をしている」と言わしめた画期的な取り組み。

JMA
そうした杉浦さんの問題解決のためにいろいろな方へ相談してまわる行動力は、上司からご覧になっていかがですか?

福井
やはり自分が納得いくまで、いい意味で遠慮せずに誰彼かまわずに聞いて、そこで納得できなければ上司を使ってでも何とかしようとするんです。結局みんなその執念に負けてしまうんですね(笑)。
一生懸命やっているといい知恵も出てきますし。専門外の人から盲点となっているような斬新なアイデアが出たりもします。それで今回旋盤工程をなくしたんですけれども。

小倉博敏氏(以下「小倉」)
削る工程をなくしたときも、「せっかく技術部隊が精を出して入れた設備をなくすとは何事だ」という葛藤もありました。しかし現場を見ていると、やはりそれが悪さをしていることに気づくんですね。現場には嘘がないんです。それを技術側が理解すると、取り組みはぐっと加速しますよね。彼は先ほど座右の銘の話をしていましたが、この取り組みの中でその言葉の価値を見出したような気がします。取り組みが進む中で仲間もどんどん増えていきましたし、話を聞く大切さを感じながら強い自分をつくっていったのではないかと思います。

私が常に監督者に話しているのは、「人の行動は3つしかない」ということ。“一生懸命な行動”か“中途半端な行動”か“いい加減な行動”か。そしてそこから出てくるアウトプットは明確に違う、と。一生懸命汗をかいて頑張っていると、いろんなアイデアや知恵が湧き出てくることが多いと私は感じます。時には、中々良い知恵が出てこないときもあります。でも一生懸命な行動に感化されて、共鳴して人が集まってくる機会は絶対増えると思います。

今回のテーマは、本当にこんなことやるのか?というハードルの高いスタートだったので、苦しかったと思います。社内の報告会でもなかなか前に進めない時期が1年くらいありましたが、あきらめない姿勢がこの結果につながったのだと思います。

渡辺さん(トヨタ自動車株式会社 相談役)にも滋賀工場にお越し頂ける機会が結構あります。昨年も、その時弊社の社長と副社長にも取り組みを報告したところ「これはいい」と言っていただき、淀川製作所長でもある副社長は淀川製作所のメンバーに「一度滋賀に行ってこい!」と激が飛びました。事業部は違えど今日まで色々と交流の機会が増えました。後で聞いた話ですが副社長は「滋賀は世界に向かって仕事をしているぞ!!」と評価頂いていたそうです。その言葉は今も印象深く新鮮そのものです。

JMA
工程やつくりかたをまったく変えてしまうわけですよね?

杉浦
まずは本当にやらなければいけないことは何かを考えました。当たり前にやっている中にはムダなこともたくさんありますよね。最初はムダを省くことから始めました。

福井
そういうことはいっぱいあります。本来お客様にとっては必要のない部品や調整作業だとか。もちろん品質を保つためには必要なのですが、よくよく考えるとお客様には不要かもしれない仕事はたくさんあるので。これまでも改善はしてきたのですが、まだまだ当たり前のようにやってきた部分もかなりありました。
この取り組みは革新的だと思うんです。3年も続けてきましたので、実は最初につくられた機種は何度もモデルチェンジしています。そこで培った知識や技術を展開しているので、最初から高いクオリティでつくることができています。

JMA
これまでの常識がガラッと変わって、正しいと思っていたことがもしかしたら正しくないという認識に変わったりもしたのですか?

小倉
渡辺さんからすれば「まだ検査やってるの?」という段階ですね(笑)。
「検査どれだけ減った?」これが渡辺さんの第一声なんですよね。でも、検査はそんな簡単に減らせないですよ(笑)。
現場に行くと「まだ検査やってるじゃないか。これいつ減らせるんだ」と言われ、次はどこまでやろうと約束させられ、日付と渡辺さんのサインが書かれるんです。でも、それは現場にとってはひとつの勲章なんですよ。検査やチェックは付加価値を生まないので、やはりここまでそれを無くそうと愚直にやってきた証だと思います。

MtoMという言葉がありますが、我々にとってはマシーンとマシーンでもなければマシーンとマンでもなく、まずマンとマン、人と人なんです。この“通心”ができないと絶対にいいものはできません。これが浸透して来たからこそ、できたのではないかと思います。

ゼロまであと一歩のところまで来ていますが、ゼロになるまでかなりの時間がかかるとみています。しかしここまできた道中で、現場の若手が相当育ってきているのも手応えとして感じており、この過程を大切にしながら当然ゼロは目指していきますが、ここからいろいろな枝葉が生まれ、色々なことに波及していき、さまざまな価値を生み出していけると確信しています。
まだゼロにはなっていないので、抜き取り検査ではなく全数検査をやっていますが、我々はゼロばかりを追いかけているわけではありません。その中で人が育っていけば、それは非常に価値のあることですから。彼らはそこにしっかり気づいてくれていると思っています。

JMA
今回の課題発見の着眼点は、モノづくりの理想の形があって、先入観を持たずに、なぜこれができないんだという素直な気持ちが出発点だったのですか?

杉浦
きっかけは部長から「検査を減らせ」という一言でしたが、これをなくしたら面白いなというのがスタートでした。取り組みを進める中で、今まで何も考えずにやっていた作業に対して、それにどんな意味があって本当に必要なのかを考えるようになりました。

JMA
そこに気づく人と、気づかない人がいらっしゃると思います。一つひとつの作業の意味を考えて、そこから新たな気づきが生まれたということですね。

杉浦
この取り組みをやっていなかったら、私もまだそうした先入観があったと思います。すごくいいきっかけをいただきました。

福井
ひとつの大きなきっかけは、ファンとモーターの2つを工場で内製するということでした。ファンはチェコの工場で内製を始め、滋賀は後発なんです。モーターの内製は滋賀が初めてです。外注していたものを内製するのは、運賃の問題だけではなく、そこに新しい技術が生まれるかどうかです。今回は「内製化」がひとつの大きなキーワードになっていて、そこに彼らが乗って新しい技術がどんどん生まれてきたのかなというのはあります。

JMA
今後、「内製化」による技術開発の広がりが期待できるわけですね?

福井
もちろんこれを海外の工場に展開しています。枠を決めずに、IOTなどをあまり意識しないようにやってもらっています。でないと小さな取り組みになってしまいますので。

JMA
途中でめげそうになったことはないですか?

杉浦
ありましたけど、私がめげたら終わりだと思ったので(笑)。ただ一晩寝たらスッキリする性格なので。表彰の時も言いましたが、人から評価されたいという気持ちが人一倍強いと思いますし、これを完遂したらすごく褒めてもらえるだろうなというのが、あきらめないことにつながっているとは思います。

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