第36回『第一線監督者の集い:名古屋』 最優秀事例賞受賞者インタビュー ダイハツ工業株式会社

2018年3月21日(水) ダイハツ工業にて

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(敬称略)

受賞者: ダイハツ工業株式会社 本社(池田)
京都工場 製造部 組立課
係長 中川智雄氏
(以下「中川」)

同 席: ダイハツ工業工業株式会社 
同社 第2製造部 
部長 福嶋洋氏(以下「福嶋」)
    同社 第2製造部 組立課 課長 山本光彦氏(以下「山本」)
    同社 第2製造部 組立課 LE 宇田剛氏(以下「宇田」)

インタビュー:一般社団法人 日本能率協会「第一線監督者の集い:名古屋」事務局(以下「JMA」)

人を笑顔にするためにはどうしたらいいか???
ずっと悩みながらやってきた中川係長だからこそ、発表者に相応しい!

JMA
第36回『第一線監督者の集い:名古屋』2日目に、「時代の流れに逆らって 職場を変えた男」をご発表され、最優秀事例賞(大野耐一・杉山友男賞)を受賞されましたダイハツ工業株式会社製造部 組立課 中川様にお話を伺います。先ずは、ご受賞、おめでとうございます。

中川
ありがとうございます。

JMA
今回、ダイハツ工業さんは代表して中川さんが発表したわけですが、中川さんを選出された背景だとか過程はどういったことがありますか?

福嶋
1つは、笑顔で職場を語ったのですが、それは彼そのままです。こういうキャラですし私が班長の頃からずっと一緒に仕事をしていますが、本当にそれを貫いてきたので、発表会で喋るのは彼しかいないと思っていました。人間ですから笑うこと、泣くこと、怒ることは誰でもあります。彼はそれがわかっていて笑顔になれる人を笑顔にするためにはどうしたら良いか、そういうことをずっと悩みながらやってきたことも知っています。だからそういう人間でないとあの場で何を言っても伝わらないと思いますし、一番大事な部分だと思います。

JMA
第一線監督者の集いは、QC発表会とはまたちょっと違い、成果発表だけではなくやはりリーダーその人にスポットを当てるので、中川さんのような発表は会場に来ている皆さんの心に響くと思います。
今回、中川さんが会社を代表して発表することが決まったことに対して、中川さんご自身、率直なお気持ちはいかがでしたか?最初はなかなかエンジンがかからなかったようですが。

中川
率直な気持ちとしては、山本課長も福嶋部長もずっと一緒に仕事をしてきた方で、今は上司ですけど先輩としての関係で、プライベートでも仲良くさせてもらっています。今回は正直この人が言ってこの人が下ろしてきたので、「ああ、やろう」と思いました。これが嫌な上司だとテンションも低かったと思います。ただエンジンがかからなかったというのはその通りで、性格的なものもありますが、7月8月と来てあと半年近くあるし、宇田がパワポを作るのが上手いので、かなり彼に丸投げしていたというのが前半ありました。そして思いを練って何回か出していましたが、正直な気持ちとしてはプレッシャーがかなりありました。だからどんな気持ちかというと、嬉しかったというのが4割。あとはこの二人の期待に沿えなければというプレッシャーです。ちょうどうちの課長が就任1年目でした。QC発表会とかいろいろありましたが、外部の賞とか全然取れていなかったので、何か1つでも取りたいなという思いがありました。そういう点では(賞を取れて)嬉しかったですね。

JMA
仲の良い、プライベートでも面倒見てもらっている上司から言われればやるしかない、と?

中川
(内容について)メチャクチャやり直しとか、細かい修正があったら「もうええやん」と普通思いますが、一度も思いませんでした、不思議と。(発表の練習を)お二人の前で何度もやったんですけど、「ここはこうしたほうがええ」とか「これはおもろないから、こっちのパートへ入れたらどうや」と毎回違う指摘が入って、原稿も書き直したりパワポも作り直したりしましたが全然嫌な気がせず、2人は本当に私たちに賞を取らせてあげようという気でやっているのだなと伝わってきました。僕に賞を取らせよう当気持ちがめちゃめちゃあったので、気持ちよくできました。なので(受賞の際に)泣いてしまって。嬉しさよりホッとした気持ちでした。どっちかというとホッとしたほうですね。嬉しさは後から出てきた感じです。解放されたという気分で。

JMA
お三方の絆というか、信頼関係があったのでしょうね?

中川
お二人はどう思っているか知りませんが、僕はそう思っています。

山本
そこはあまり深く考えていませんでした(笑)。ただ彼はこの第一線監督者の集い(での発表)は、本当にもってこいだなと思っていました。それで彼に行けと。最初は「いやいや」と言っていましたが、「自分たちがやっている現場を見てもらうチャンスやで」と言ったら、「わかりました。行きましょう」と。それで行くからにはトップを取ろうという話で。

中川
毎年年賀状をいただいているんですけど、今年の年賀状では「目指すはてっぺん」って書いてありまして、またプレッシャーがかかると思いました(笑)。年賀状に書いてくるくらいだから、こちらも気合いが入りました。また、うまいことやるんですよ、逃げられんように。例えば部長のアポを取って、来週の何曜日に部長が聞くからと言うんです。こっちは部長が忙しいことはわかっているので、それまでにある程度やるしかありません。逃げられないように周りを固めていくんです(笑)。

2015年 2直操業から1直操業へ  京都工場閉鎖の危機感
実力も元気もある京都工場本来の姿を取り戻したい!

JMA
今回の中川さんが発表された活動は、いつ頃から活動されているんでしょうか?

中川
品質道場自体、リニューアルは2016年ですけど2015年ですね。

山本
2015年の後半がすっきり、その後に品質道場のリニューアルでした。

中川
もちろん日々活動はしていますが、私が発表したものは15年くらいです。

山本
(活動の)きっかけは、報告にもあったかも知れませんけど、京都工場が2015年7月から2直操業から1直操業になったんです。その時にモチベーションが上がらないと本人も気にしていたところがあって、京都工場はもっともっと実力があるし元気もあるということが売りなのに、そういう雰囲気になって淋しいなということからでした。結局、そうしたモチベーション低下が品質とか安全とかコスト面にも少しずつつながっている部分があって、何とかしたいなと言うことになって、今回の仕掛けをしたことで周りがそれにおだてられて動いてきたと言うことですね。

JMA
2015年が一つの転機だったわけですね。

山本
2直から1直になったところから、ここは変わってきたかなと思いますね。現場は操業がモチベーションに直接つながりますから。忙しいと文句も多いんですけど、暇になると「これから先どうしたらいいのか」という不安が先に来ますので。それで報告の中にあった崖っぷちというところを肌で感じて「これはまずいぞ」と。そうなってくるとよそから入ってくる情報で「工場が閉まるんじゃないか」と実際に生の声が周囲から入ってきますので(みんな不安になっていました)。

福嶋
今も脱出はしていません。1直で低操業が続いていますし、ここまでの低操業はダイハツの中でも京都工場くらいです。

山本
働いているほうにとっては、給与面でも大変厳しい中やってもらっています。ただ、何を目指して、何をどういう風にして働いていくかを考えた時、やはり、やりがいとか達成感を味わえる、仲間と共有できる、働いていて楽しい、という部分が大事じゃないかということで、今回仕掛けたこともありました。
一番大事にしていることで彼(中川)が発表した中では「心車づくり」ですね。京都工場は、人を大事にする、心を大事にすることをできるだけ意識して、昔からずっとやってきましたので、今もトヨタさんや他の工場の人も見に来られます。見ていただければわかりますが、決して誇れる設備もありませんし、立派なラインになっているわけではありません。ただ「ここに来ると違うな」と言っていただけます。

山本
元々京都工場は、トヨタさんの車を作らせていただいて、昔ではスターレットや、カローラも高岡(工場)とブリッジ生産していました。今もプロボックス、サクシードを作っており、ずっとトヨタさんの車をやらせていただいている工場なんです。

今回の受賞が大きな起爆剤に! 明るい京都工場へ変貌
会長、社長はじめ役員や他工場からも賛辞。 
中川流“目を合わせろ、顔を合わせろ、心合わせろ”は、京都工場のスローガンへ

JMA
先が見えない部分もありますが、現場で皆さんがきちんと実力を付けて現場力を上げていかないと、くしゅんとしていても進まないですからね。

福嶋
そういう意味では、今回の受賞がものすごく良い起爆剤になりました。(現場が)明るくなりました。組立課だけが明るくなったんじゃなくて、京都工場自体が明るくなりました。「こんなのやってるんだ、すごいな」とか。会社も取り上げてくれまして、全体で盛り上げてくれました。京都工場だけでなく本社のほうでも発表会をぜひ聞かせてやってくれと言われ、役員からも声をかけられました。

JMA
受賞後は、トップの方々の京都工場に対する評価は変わりましたか。

中川
この大会の企画委員で社内事務局の満留さんが本社工場でもすごく宣伝してもらっていて、役員の方々にも広めてもらいました。大きかったのが、私たちは知らなかったのですが、中部経済新聞に掲載された記事を会長、社長、副社長、秘書に電子データで送っていたんですよ。私の名前よりダイハツ工業と社名が載るのが良かったようで、副社長から直接おめでとうというメッセージもらって。一係長が副社長からメッセージをもらうのはあり得ないんですけど。会長からも直接言われました。

JMA
我々が考えている第一線監督者の集いというのは、一人の監督者が元気になることで、それを媒介として多くの監督者が元気になる、いろんな現場を元気にするということを目的にして開いている大会なので、そういった意味でも今のお話は我々としても企画しがいがありますし、逆にそういった話については我々も広くお知らせしたいと思います。

JMA
今回、他の会社さんでも「自分たちの工場がなくなるんじゃないか」という危機感を持った方もかなりいる中で、中川さんの発表ですごく勇気をもらったというアンケートコメントを多くいただきました。

中川
発表後に質問票をいただきましたが、207枚ありました。投票点数も後で教えていただきました。

福嶋
やっぱり同じ職種、同じ現場だと共感を得ますよね。私は東京ビッグサイトでQCの発表会をやっていましたが、堤工場さんの発表を見まして、これは良いなと思いました。それでここに来て発表していただいて。あれでちょっとみんなの意識が変わりました。QCは何のためにあるかと。その時の内容が、自分たちに良いように変えていくのがQCで、誰のためでもないよと言うことを教えてもらった。あれからQCが変わりました。

JMA
皆さんの意識や姿勢はどのように変わったのでしょうか。

中川
何かうっとうしいというか、やらされていたというのがありました。

福嶋
あれから工場は、厳しい検定を受けようと言うことで2級を取ったり。

中川
私たちでも、誰でも受かるという4級を取りに行きましたから。

福嶋
前向きになりました。

山本
自己研鑽を始めたりだとか、他の会社を見に行ったりだとか、逆に、今しかできないことを考えだしました。以前の2直の時はそれができなかったし、考えもしませんでした。

福嶋
やっぱり刺激を受ける、気づきをもらうのが大事です。今回の大会では、ヤマハさんの発表は、プレゼンテーションの仕方がすごく挑戦的だなと思いました。デンソーさんは王道を行っていて勉強になりました。各社いろいろな特色があって、面白いですね、。

JMA
今回の発表の中では、中川流と言うのが1つ、2つ出てきましたが、この他にも中川流っていうのはあるのでしょうか。

中川
きれいにネーミング、“目を合わせろ、顔を合わせろ、心合わせろ”と全部があの3つに入っているのかなと思います。特別それ、それ以外はなく、あれだけ大きなもので“目を合わせろ”だけまとめて、それだけではいかんなと思い、1つのポイントでいろんな名前を付けていたんですけど、どれも面白くないと思って、中川流っていうタイトルを付けてもらったんです。それ以外はなくて、あれが全てです。
この前も社長がお見えになった時も、部長は「京都工場、目を合わせろ、顔を合わせろ、心合わせろをモットーにスローガンとしてやります」と話していました。また、つい最近点検があって、その時もスローガンとして掲げようと、組立課発信を工場全体でやろうとしています。私もあの中に全部入っているという気持ちでいます。

ミーティングの参画者に変える「本音ボード」
Light You Up! 一人ひとりがバッターボックスに立って主役に

JMA
本音ボードを導入して、という部分は、参加者の皆さんの質問でも本音ボードを実際に見てみたかったという意見がありました。

中川
ミーティング資料のパワポは一瞬なんです。ミーティングで「こういう風にやりました」、その議事録を一生懸命パソコンで入力するわけです。結局1人がパソコンで入力するだけで、周りの者はそこにいるだけで何の話をしているか全然わからない。それで時間が来たら解散する。その後出力して配るだけです。
それで、ここにあるホワイトボードが自動印刷できるので、全員が集まってそこに好きなことを書き出し、あとはそのまま印刷すればOKなので、1人がパソコン入力をする必要がなくなります。それを私が見て、課長が見て、それでコメント書いて現場に戻すという流れにしました。
ただ本音ボードという意味は、全員を1ヵ所に集める。この通りのことができていなかったので、もう一度原点に戻ろうということです。それが時代に逆らって何でもパソコンやハイテクに行きがちなのが嫌なんです。

山本
今はパソコンなどを使ってきれいにまとめようとする風潮があって、逆に本音ではなく建前が先行してきます。そうなると私たちに伝えたいことも全然伝わらないし、実際に15分もかけてやっているミーティングが参加者の塊になり、参画者になっていなかった。そこを何とかしたかったですね。それでいっそのこと、まとめると言う部分を排除し、手書きで書いてその書いたものをみんなで討議するというやり方に変えました。

JMA
書くのは発言者が書くのですか。

中川
そうです。書記はいますが進行役みたいなもので、工区によっては順番性で書いたりしています。

山本
いろんな人にスポットを当てようというので、今会社のスローガンでLight You Upというのがありますが、それが現場のほうまで情報がしっかり下りてきているので、私だけが全部やるのではなく、みんなが順番性で、そして一人ひとりスポットを当てていこうという思いです。それで現場でも一人ひとりを活かすということで、1人に固執せずにみんなに平等にチャンスを与えようということです。よく例えでバッターボックスに立てと言いますが、同じ者が立つのではなく、順番にいろんな人が立つことで、しっかりとプレーヤーとして活き活きした場所を与えたほうが良いというのもあって、それが上手くマッチしたかなと思います。

JMA
そういうのは組立だけでなく工場全体に広がっているのですか。

中川
今は徐々に広がっています。

福嶋
パソコンやメールは否定しません。連絡はそっちの方が早いですし確実に伝わることもあると思います。ただ、「会議と連絡を一緒にするな!」と言うことです。会議というのは、目と目を合わせろだから、人の顔を見て話せと言うことです。人の顔を見て何を話すかと言えば、こういうことを言ったら相手がどういう顔をするか、怒っているか、腑に落ちないのか、納得していないか、まだ理解できてないとか、そういうのを見ながら進めていくのが会議です。それをやっていこうと。ホワイトボードに書くことをきっかけにして、目と目を合わせて会議をしなければ本音も出てこないのでは。パソコンで内容を送っても本当にわかっているかどうかわかりません。見ているかどうかもわかりません。そこが大事です。毎朝の朝礼でも、みんなの顔色や態度を見ることが管理者の大事な仕事です。だから監督者は目を合わせることから始めなければいけません。

中川
私たちがそう思っていても、実際にホワイトボードは高価で、10万円くらいします。工場には9工区あるんですが、上司の決裁で購入が決まります。中には上司の取り方によっては、そんなものは不要という場合もあります。私たちが提案したものを上司の方たちが通してもらえるので、下の者にとってはとてもありがたいですね。今まで無茶な要求をしたことがあったかも知れませんが、ほとんど通してもらっています。

山本
彼の場合、いきなり(ホワイトボードが)9台必要ですではなく、モデル工区を作って、今までと同じようにやっている工区と比べられるようにします。そうすると本音ボードを使ったほうがしっかりやっていて味もあるし、中身も濃いというのがわかるんです。それでホワイトボードを徐々に増やしていくというやり方なんです。それで、まだ導入していない工区の人も本音ボードでないと生きた会話ができていないと気づき、最終的に9台揃えることになりました。一気に揃えるのではなく、効果を見ながら増やしていったんです。

JMA
そうでないとヤル気にならないですよね。こういうやり方が良いからとただ与えるだけでは、やり方だけが変わるだけになってしまいますね。
福嶋
それでは、何でもホワイトボードに書いておけば良いとなってしまいますから。

JMA
上司が良き理解者で良かったですね。

中川
そうですね。今回要請していただいた時も、私たちも言うこと聞いていただいているし、私たち下の者もそう言われたら何とかしようという気になりますね。そういう上司から下りてくると嫌な気もしません。

JMA
部長様や課長様からしてみれば、現場を良くしようと思って上がってきている提案だから、前向きに捉えて後押ししてあげようということですね。

福嶋
そうですね。金の使い途はいろいろあって、どこに使うか、目的は何かさえしっかりしていれば後押しをします。

JMA
逆に何も言ってこない現場のほうが困りますよね?

山本
そちらのほうが衰退していく感じですね。部下のほうから上がってきたものに対しては、拒否、拒絶するのではなく、まずは受け入れてやらせてみて、それでダメだったら次はやめようというようにしています。最初から否定すると何も進まないので、何かをやってダメだったらもう一度見直して、次に進めるというようにすれば、改善されて違う形でスパイラルがアップしていくと思います。

福嶋
よそが持っているから、うちも買ってくださいというのでは判子を押しません。そういうのは一番ダメですね。

互いに切磋琢磨しあえる個性派ぞろいの『係長会』
トラブル解決は、全員で知恵を出し合って対応する~京都工場の環境と伝統

JMA
中川さんの場合、自分たちのチームでこういうことをやっていますよというのを、日々の活動の中で広めていった感じですか?

中川
広めていったというより、この第一線監督者の集いで中身も全部わかってもらったのですが、私と同じような係長が各ショップにいて、3時半に全員集まるんです。そこでは愚痴の言い合いをしながら、こういうことをやっている、という話はしますね。また他の係長からこういう工夫をしているとか、こんなことをやっているというのも聞きます。うちの本音ボードも他のショップがこれは良いと言って1〜2台買ったというのは聞きました。

JMA
係長会みたいなものはあるのですか。

中川
定期的にはしていませんが、毎日3時半に品質ミーティングというのがあって、そこで顔を合わせます。その時は部長も課長も出席しますが、係長中心で行います。その後に私たちだけで少し集まって。2直の時は夜もやっていました。課長がいないので係長だけでまとめていかなければならなかったので。でもだいたい1日1回は係長同士で顔を合わせる機会はありますね。

JMA
そういうときに横の情報交換を行うわけですか?

中川
そうですね。他の工場はわかりませんが、京都工場は小さな工場ですから集まりやすいし、そこはちゃんとやっています。

JMA
できそうで、なかなかできないんですよね。

山本
横のつながりでも難しいところはあります。でも京都工場は、係長の年代が近いこともあって、若い係長はキャリアを積んだ係長から情報をもらって切磋琢磨して上がろうとしています。横のつながりは組立だけでなく、全ショップの係長が2〜3人いて、結構みんな中心的にやってくれています。

JMA
やっぱり誰かリーダーシップを取る人がいないと、会だけはやるが、中味が薄まっていきます。

福嶋
これは京都の伝統なんです。なぜ伝統になっているかというと、ちょっと特殊な環境がありまして、本社とか他の工場では、横にスタッフ部門がいたり設計部門がいたりして、何か困ったことやトラブルが起こるとすぐ駆けつけてくれます。ここはよく見てもらうとわかりますが、川に囲まれ山に囲まれているので、(何かあっても)すぐ来てもらえません。なので自然に自分たちで結束して知恵を出し合って対応しなければ仕方がないんです。これは昔からずっと先輩たちがやってこられて、今もそれが引き継がれているわけです。

JMA
でもそれは良い面ですよね。サポートのスタッフがいつも横にいて、頼っていれば何とかなるというのは、進化する部分が少なくなりますよね。それが自分たちで問題対応していけば、ブラッシュアップもしていきますよね。その良い文化は継承し続けて欲しいですね。

福嶋
それを進化させていこうとなると、人との会話とかを大事にしていかないと。そうしないと(伝統が)途切れてしまいます。そういう言う意味では彼が一番初めに気づいた「これじゃ、あかん」と思ったのが、そこかも知れません。現場がダメになる、京都工場らしさがなくなると思ったのでしょう。

中川
とはいえ、部長の立場で言われていますが、ここ数日細かいごちゃごちゃがありまして、先日部長とある総会に出席した時に「最近係長同士がちょっとばらけてるな。1回みんなで飲み会として集まったらどうだ?」と言われました。確かに1直になって土曜日出勤が多くて、なかなかみんな集まる機会がなかったので、半年以上開いていませんでした。部長が係長の頃は頻繁にやっていましたけど、言われて私ははっと気づいて、係長19人いるんですけが、すぐにみんなに声をかけました。

JMA
中川さんは、係長会のリーダー的存在でもあるのですね。誰かが言わないとなかなかそういう機会が作れませんからね。

福嶋
またそこでハードル上げる。しょうもない飲み会だったら認めない(笑)。

中川
そうですね、これもやれば良いというものではないですから。部長ほどの飲み会はできませんけど。パワーが違いますから。

JMA
それで係長会の中でも中川流を発揮するのでしょうね。

福嶋
今回は中川でしたが、他にも個性の強い係長はたくさんいます。本当に面白い係長が揃っています。ボディーなんか係長は個性がありますし、どこの工場でもやっていないことに挑戦しています。プレスもそうです。

JMA
それは良いですね。係長が個性豊かで元気があるというのは良いことですね。

福嶋
中川は中川流というように、他の係長も自分のやり方を持っているので。

JMA
最近は平準化を含めて金太郎飴みたいな人物を作ろうとしているところが多いですね。

福嶋
京都では1回作って、次に同じようなものだったら捨てていますね(笑)。

中川
山本さんも一昨年まで係長で、個性丸出しでしたから。

福嶋
やっぱり○○流というのがないとダメですね。

JMA
そうですね、仕事やっていてもつまらないですね。

福嶋
職長は「うちの係長は…」というけど、あれは誇りに思っている。そういうのを見ているから、次の世代がそれを引き継いでオレ流を出そうと、オレが係長になったら、こういう風にやろうと伝承されていく。

中川
部長が理由を付けてくれたように、やっぱり京都ですね。京都のイメージがあります。どこのショップも理由が全部あります。

これからもエネルギッシュな中川流で突き走る! 
そして、
個性ある自分流を持った次のリーダーも育てる!

JMA
今回、最優秀事例賞を受賞されて、ご自身が最も得票数が多かった理由、ここが評価されたなというのはどこですか?

中川
他の7名の方も素晴らしかったので、正直に取れるとは思っていなかったです。どこが良かったかというと、わからないというのが答えですが、自信を持って自分たちの部下が、この直近の3年間の活動で小さなことから一生懸命やってくれていたことをまとめて話したことですかね。
発表の途中までは緊張していたのですが、途中から目の前に課長がいて、横に部長がいてその横にも部下が10人くらい応援に来てくれていた。それを見た時に本当に嬉しくなってきて、何が受けたかというと、皆さんより若干気持ちが伝わったということですかね。皆さん、自分たちの気持ちで話したと思いますが、偉そうに言うと思いは皆より強かったかなと思います。

JMA
自己評価は何点くらいですか?

中川
自己評価を言うと100点です。少し(言うことを)飛ばしましたけど、気持ちは全部出しました。言いたいことは全部伝えられました。結果は別として、後悔はしたくなかったので、そこは自分でもできたと思います。実は原稿にないことも話しています。感情で話しているので、これと実際の原稿は全く違いますね。

福嶋
共感いただいたのは、単に物を買って設置するだけでないことをみんなわかってもらえたかなと思います。誰のためにするのか、人のためにすると言うことを共感いただいたと。尚更、それを大事にしていかないと、違う方向に行ってしまうかなとも思います。崖っぷちとあったけど、自分たちの職場に置き換えて見ていただいたとも思います。

JMA
危機感というものを現場の監督者としての立場で感じて、一歩足を踏み出しながら取り組めたことを皆さんはすごく評価されたと思います。自分たちでは環境を変えられない、自分たちで工場を変えることはおこがましいと思って仕事をしているんですね。そのあたりが共感を覚えたと思います。

福嶋
そういう意味では京都の風土というか、やりやすいと感じるのではないでしょうか。挑戦しようと思えばいつでもできる。それは私ではなく、もっと上の工場長や役員が「ダイハツはこうやっていこう」という筋を一本通してもらっているので、まさしく会長が個人個人に光を当て、みんなが舞台に立とうと言うことを唱っているので、こういうことができるのだと思います。

中川
ここ数年は、私たちでもやりやすい。そこのショップの係長も言っています。だから思い切ってできることが元気につながっている。

JMA
今回の受賞で、ご家族の反響はいかがでしたか。

中川
娘2人いますけど、家族みんながすごく喜んでくれました。あんな反応もびっくりしました。発表前日も上の娘がLINEで「パパ、明日頑張って」と、当日もまた連絡をくれて。終わってからは下の娘が「パパ、どうやった?」と送ってきてくれました。それで賞をもらって家に帰ったら、ワーッとなってハイタッチしたり、こんなこと初めてでした。あれはまた泣きそうになりました。それで課長たちが作ってくれた社内報を持って帰ったら、娘も喜んで、DVDも早くみたいなと言ってくれましたし、ものすごく大反響でした。

JMA
職場の皆さんの反応はいかがでしたか。

中川
びっくりするくらい恐ろしいほどのメールが、会社と個人のメール両方に来ました。ショートメールもすごかったですね。全ダイハツ工業の係長会があり、17年度はその会長に私が当たっていたんですよ。それで社長や役員の前で挨拶するので、目立つわけです。それで発表会には今年の会長が出るのかと、社内では前評判がありました。そういうこともあって北海道から沖縄の各支部などから私を知ってくれている人から、余計にビックリするくらいの反響がありました。あと部長と満留さんが各工場に発信してくださっているので、そういう意味ではすごく広がりました。

JMA
受賞されて、今後中川さんがこういう風にしたいとか、こういうことをやっていきたいという抱負はありますか?

中川
抱負としては、まだ笑顔になれていない人がたくさんいますので、その人たちを全員笑顔にしたいですね。今は京都工場として早く2直にして元気を付けたいと思いますし、どこの工場にも負けたくないという思いがありますね。(受賞後は)解放されて良かったというのがありましたけど、また違うプレッシャーがかかってきました。

JMA
ご自身の中でも第一線監督者というのは、中川流をさらに進めながらどういったイメージをお持ちですか?

中川
私は自分流を貫き通さなければいけないと思いますけど、次は後継者の育成ですね。私も50歳になり、いつまでもこのままでは。先頭を走らなければいけないと思いますが、育てていくこともこれからは大事になると思います。性格の違いはありますが、信念を貫ける人、自分の○○流を持っている人を作っていくのがこれからの使命というか試練ですね。私が突っ走るのは意外と簡単ですけど、同じようにリーダーシップを取れる人材を作っていくことは、そこそこいますけど、先ほど言われた京都らしさ、個性の強さでいくとまだまだコピーというか金太郎飴なので、皮をむいてあげないといけないし、色を付けてあげないといけない。そこに葛藤があり、同い年の係長といつも話し合っています。

JMA
最後に山本課長様と福島部長様から、中川さんに期待することをお聞かせください。

山本
これからもエネルギッシュという部分は失ってほしくないと思います。それが全て中川流の原点なので、エネルギッシュな現場を作るには、自分がエネルギッシュでいなければならないので、そこを絶やさずにやってほしいですね。それともう一つ、後継者という問題で、コピーを作るのではなく、オリジナリティーを持った後継者を作って欲しいなと思います。

福嶋
私も京都でずっと育ってきて、これからどういうことを考えていくかというと京都工場、もっと広い目で言ったら全工場。志を大きく持ってこのキャラでやってもらっていったら良いかと思います。今回、良い機会をいただいたので、これをステップにしてさらにやってもらいたい。

宇田
私は今回パワーポイントを頼まれたのですが、パワーポイントは時間と技術さえあれば誰でも使えますが、その中に全体の心がこもっていまして、それを表現するのが大変だったのですが、最後に絶対良いものができると信じてやって、結果を聞いた時は涙が出ました。そういう思いで作って結果が出たことは大きな達成感が得られましたので、それだけでも感謝したいですね。

JMA
次回も、京都工場の個性的なリーダーの皆さんの発表エントリーされることを楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。

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