第35回『第一線監督者の集い:名古屋』 最優秀事例賞受賞者インタビュー 白河オリンパス株式会社

2017年3月22日(水) 白河オリンパスにて

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(敬称略)

受賞者: 白河オリンパス株式会社 製造部 製造1グループ 実装チーム 
チームリーダー 課長代理 
薄井雅則氏(以下「薄井」)
同 席: 白河オリンパス株式会社 代表取締役社長 村上不二男氏(以下「村上」)
同社 製造部 部長 小林重徳氏(以下「小林」)
オリンパス株式会社 製造部門 製造統括本部 製造企画部
OTSグループリーダー 課長 重盛孝氏「以下「重盛」」

インタビュー:一般社団法人 日本能率協会「第一線監督者の集い:名古屋」事務局(以下「JMA」)

“自分もいつか事例発表のステージに立ちたい” その思いが実現!
“喜び”と“不安”が半々のなか、メンバーの祝福とバックアップが支えに!

JMA
第35回「第一線監督者の集い:名古屋」第1日目に、「信頼から生まれる“やりがいのある職場”〜ブレない信念で取り組んだ職場づくり〜」をご発表され、最優秀事例賞をご受賞されました白河オリンパス 薄井チームリーダー(以下TL)に、お話を伺います。まずは、ご受賞おめでとうございます。

薄井
ありがとうございます。

JMA
今回「第一線監督者の集い:名古屋」に、ご参加、ご発表いただいたわけですが、社内でこの大会に参加されたきっかけや選ばれた経緯などをお聞かせいただけますか。

薄井
「第一線監督者集い」は過去に2回聴講させていただき、製造現場で頑張っている監督者の皆さんの取り組みは非常に参考になりました。「私もいつかはこのステージに立ちたい」という思いで監督者として頑張ってきました。白河オリンパス社内でも管理監督者の方針や改善活動の報告会に何度か参加して、都度経験を積んできました。

JMA
いくつかの社内報告会に参加されていますが、その時のテーマは同じような内容だったのですか?いろいろな活動報告もあったと思いますが。

薄井
基本のテーマは同じです。報告の都度いろいろな方々からの質問やアドバイスを自分なりに考えて今回の発表に生かせていると思います。

JMA
今回、白河オリンパスはもちろん、オリンパス様を代表してご参加されたわけですけれども、「第一線監督者の集い」に出場が決定された時のご感想はいかがでしたか?また、職場の周りの皆さんの反応はいかがでしたか。

薄井
率直な感想は、本当に参加したかったので「ようやく認められてあの場に立てるのだな」とすごくうれしく思いました。ただ、半分以上は不安でした。上司
も私が「出たい」と言うことを知っていましたので「おめでとう、良かったね」と言ってくれたのですが、「準備が大変だよ」とも言われ、そこは心配をしてくれていました。周りの皆さんが一緒に喜んでくださったのがとてもうれしかったです。

JMA
上司である小林部長は、薄井TLの日頃の活動を近くで見ていらっしゃって、これはぜひ推薦したいというお気持ちはありましたか?

小林
薄井TLはマネジメントに力を入れて日々仕事をしていましたので是非推薦したいと思っていました。マネジメントされた職場を見ていて、どんどん良い方向に変化していたので、これは白河オリンパスやオリンパス関連会社の枠の範囲だけではなく、全国で発表することで、さまざまな会社の方と切磋琢磨し、本人が更にレベルアップする良い機会であると思いました。本人も参加を望んでいたので、我々管理者もバックアップし、良い報告ができるように支援しました。

JMA
村上社長は、今回、薄井さんには満を持して、自信を持って推薦されたわけですね?

村上
私が社長に就任したのは昨年の6月ですので今回の「第一線監督者の集い」参加の布石はそれ以前から行われていました。まずはじめは白河オリンパス内の報告会で薄井TLは一番良い発表をしました。「じゃあ、他者と比べるとどれくらいのレベルなのか?」。勝負じゃないですけれども挑戦してみようということで、会津オリンパスのリーダー大会を経て、今回JMA様の「第一線監督者の集い」に参加することになりました。足かけ1年半くらいかかっていると思うのですが、少しずつステップアップをしてきました。こういう機会を得られ発表できて本当にうれしいことだと思っています。

会津オリンパスでのリーダー発表会が、全オリンパスのリーダー発表会へ拡充!
他事業場との活動交流とレベルアップが、「第一線監督者の集い」名古屋大会、福岡大会それぞれの最優秀事例賞受賞に結び付く!

JMA
会津や白河などオリンパスグループのいろいろな大会、事例発表があると思いますが、オリンパス様の中でそういった活動の交流の場はあるのですか?

重盛
オリンパスグループ内にはいろいろなイベントがあります。近年オリンパスでも海外工場から事例発表も行われるようになってきています。村上社長からあった会津オリンパスの「リーダー大会」は10年以上も続いています。井の中の蛙にならないように他の事業場から招待講演を取り入れ、昨年のリーダー大会では国内製造全事業場から発表がありました。まさに会社の壁を越えた取り組みとなっています。このような他流試合でバッターボックスに立つ機会を多くつくることはお互いに刺激し合い、全体のレベルも上がる良い取り組みであると考えます。「第一線監督者の集い」も昨年までは名古屋大会のみにエントリーしてきましたが、今年は2つの良い事例があったのでJMA様に相談して、〆切りぎりぎりでしたが、福岡大会にもエントリーさせていただきました。このような場を提供していただきJMA様には大変感謝しています。

JMA
会津オリンパス様の改善活動が全社的に広がってきたのですね。会津オリンパス様含めてグループ各社の活動が、今度は白河オリンパスの発表を聞いて、お互いに切磋琢磨していく機会が生まれているのですね。

重盛
そうですね。今年は名古屋、福岡大会の双方にエントリーさせていただきましたが、本来は高校野球の甲子園大会ではないですが、各職場、各社での地区予選があって、勝ち上がった者が「第一線監督者の集い」に参加する「しくみ」をつくって継続的にリーダーを育てていく環境や仕掛けが必要であると思っています。今後の取り組みは検討していきますが「継続」が鍵になると考えます。

JMA
ある鉄鋼会社様などは各工場・関連会社参加の改善活動大会があり、その発表事例によって、第一線監督者大会が相応しいのか、QC大会が相応しいのかを、社内事務局が選抜してエントリーされているようですね。
また、大手自動車会社様は、5000サークルぐらいあるようです。世界大会で勝ち残ったところがQC大会などで発表されるようですね。そういう意味では「しくみ」も大切だと思います。
また、最近では発表・プレゼンテーションをよく練習されて上手になっていますし、資料づくりも上手になっています。しかし、上手な発表や資料をつくることが目的ではありませんし、これまで受賞されている事例を拝見していますと、聴講参加されている方々が何を見ているか、評価しているかというと、その人のリーダーとしての人柄や真摯さだったり、改善やチームに対する思い入れや情熱だったりなど、そういうものを観て共感を覚えて投票されているようです。
今回の薄井TLの発表もそういうものがどんどん伝わって、今回の受賞に至っていると思います。そのあたりは発表されたことで、ひしひしと感じられたことはありましたか?

薄井
もちろんその点はすごく感じています。特に私の何とかしなければという情熱が、聞いていただいた皆さんに共感されたと思います。会社に戻ってからの反響は、他職場の管理監督者が「どんなことをやっているの?」と職場にまで来て、「こんなことでモチベーションを上げているんだ」など、このような話をすごくするようになりましたね。みんな「共感を持ってくれているんだな」と感じます。また、社内を歩いていても良く声を掛けてくれるようになりました。

JMA
昨年受賞されたダイキン工業さんも滋賀の事業所で受賞されましたが、受賞された経緯を社長さんがお聞きになられて、他の事業所からぜひ滋賀の事業所に行って聞いてこいと言われたそうです。滋賀の事業所にするとダイキングループの中でこれだけ注目を浴びたというのは、中にいる人たちも誇りに思えるし元気が出てくることもあるので、ぜひそういう電波を発していただきたいですね。

村上
特に、この「第一線監督者の集い」の賞を意識しているわけではないですが、地道なQC活動からスタートして、TPS活動の「問題解決の8ステップ」などの手法を活用し改善を行い良い結果を出して報告する場をつくってきました。それに比例してプレゼン力も上手くなっていくという形ができてくるのですね。少しずつレベルアップしながら回しているのが実態です。オリンパスのどの工場でもやっていますが、「地道にやり続けること」が大きな成果につながることであると思います。

JMA
改善活動でしっかり品質管理をすることが必要であり、これはものづくりのメーカーであれば当然なことです。先ほど小林部長が“マネジメント”という言葉を使われましたが、現場が元気になる、改善活動を通して現場の技術やスキルが伸びていく、継続していく上で“マネジメント”という言葉は大事だと思います。そういう点でいろいろ気をつけてやっていらっしゃるようなので、これから楽しみですね。

小林
そうですね、白河オリンパスの改善活動は、毎月本社の改善指導トレーナーが来て作業者や第一線監督者にTPSの考え方や手法を伝授する活動を継続しています。その改善活動で、薄井TLの職場はいつも高い評価を受けていますが、それは、作業者との信頼関係に重点を置き職場マネジメントを行い、成果を出し続けているからです。
そして、トヨタ自動車様が言われた「ものづくりは人づくり」は非常に共感するところがありますので、我々も作業者や第一線監督者の育成に取り組んでいます。これらの取り組みが徐々に実を結んでいるところであり、これから益々成果が出ると楽しみにしています。

元気のない職場とメンバーに、目線を合わせて、一人ひとりと対話!
メンバーの困りごとは即行動で解決、フォローで、信頼とやる気を引き出す!

JMA
今回、薄井TLが異動された時に、メンバーの皆さんは残業が多くて疲弊感があり、また他職場への異動希望の声も多々あったと話されていました。そういった中で薄井さんが最初に職場へ行った時のお気持ちを改めてお聞かせください。

薄井
職場に異動して最初に挨拶した時に、「なんか元気のない職場だな」という感じを受けました。そこで、私は意図的にメンバーにいろいろ話しかけたりしたのですが、メンバーの回答は単語でしか返ってきませんでした。しかし、元々は、ポジティブな方が多い職場だったので、メンバーのやる気を前面に引き出す活動をしようと考えました。

JMA
薄井さんは、人にフランクというか、構えずに自然体で接していらっしゃるように感じるのですが?

薄井
そうですね。その点は注意しています。私はこれだけ背が高いので(186cm)、真正面から行くと威圧的な印象を与えてしまいます。意識していることは、目線を合わせて話しかけるとか、話す時は語尾を少し上げています。
この様な些細な気遣いだけでも、メンバーの心境に変化がある事を取り組みの中で学びました。

小林
薄井TLは、過去に白河オリンパスの従業員で構成する「親睦会」の会長を務めていました。そうした経験からも色々な年齢層やタイプの人と接する術を学んできていると思います。

*親睦会
白河オリンパスは労働組合がありませんので、管理者を除く従業員は親睦会に加入します。ボランティア活動や明るく働きやすい職場作りに会社と連携し取り組むインフォーマル組織です。「夏祭り」や「忘新年会」など従業員の一体感醸成にも会社と協業した取り組みを行っています。

JMA
従業員の皆さんからは頼られる存在であったのですね。

薄井
従業員からは「薄井会長に言えば何かやってもらえる」という雰囲気、期待はあったと思います。

JMA
シフトをどう変えていこうかと思い悩むことや仕事で追い詰められた時期があったと思います。お子様の励ましのお言葉もありましたが、どうやってその壁を乗り越えられたのでしょうか?

薄井
そうですね。子供や家内からの励ましもありますが、やはり自分自身の「何とかしたい」という『思い』が大きかったですね。
私の職場は50人と規模が大きく、次から次と課題も出ていて疲労感があった為、言葉だけではメンバーは動いてくれません。『思い』だけではちょっと空回りしていたところもあります。そこで私は「自分でも動こう」と決めて、元々機械加工職場の出身でしたので、その技能を生かし設備が壊れた時には私自身が「自ら修理を行う」。というように「メンバーが困っていることがあれば即行動」を意識しました。そうしたら徐々にメンバーが変わってきてくれました。今回の私の取り組みは、ここが上手くいったポイントだと思います。

JMA
リーダーシップを発揮しながらもフォロアーシップなことも行動で示したということですか?

薄井
そうですね。

JMA
先ほど目線を合わせるということでしたが、むしろ目線を下げたところでメンバーの方々の困り事を助けていく、解決していくことからやられていく感じですね。そういった思いは昔からあったのですか?

薄井
先ほど少しお話しが出ましたけれども、「親睦会」会長という立場で、白河オリンパス全従業員を代表する者なので、ふんぞり返っていてはなかなか信頼してもらえません。従業員一人ひとりにできるだけ細かく話を聞くと、上司に言えない悩みなどいろいろな話が出てきます。その上で対応できるところはなるべく早くフォローする。当時は色々大変でしたが、私のマネジメントはこのような経験から培われてきたのだと思います。

JMA
薄井さんより年齢が高い方もずいぶんいらっしゃいますでしょう。チームの方も含めて。そういう方々に接する時に気をつけていらっしゃることはどんなことですか?

薄井
年上の方と話をする際は、その人の人格なり特性を尊重するようにしています。年齢に関係なく、その人の特性を生かせば伸びる人は沢山います。そういったところを上手く引き出せるようにメンバーを褒めることと、話を良く聞くことに気を付けています。

JMA
一人ひとりの持ち味を大事にすることですね。薄井さんがそういう行動されていることには、恩師の教えやご両親の教えなど、何かきっかけなどはあったのですか?

薄井
そうですね。会社に入ってからのいろいろな経験から学んできたと思います。まずは、自分がメンバーだった時に上司から受けた指導。次に自分が監督者に成りたての頃、多くの失敗をした都度メンバーから意見をもらいました。それら意見を真摯に受け止め、対応をして来た経験の積み重ねが、私のマネジメントのベースになっています。

JMA
それが薄井さんの信念やマネジメントのスタイルな訳ですね。

薄井
はい、そうだと思います。

お互いに助け合って、失敗も認める! 失敗をプラスに変える組織風土
苦労を共にするメンバーからの一番の褒め言葉
―“薄井TLといると楽しい”

JMA
小林部長は近くで見ていらっしゃるなかで、オリンパス様のなかでは失敗をプラスにしていくという風土はあるのですか?

小林
そうですね。確かに白河オリンパスの風土は、失敗に厳しいというよりも、失敗を認め、お互いに助け合って、プラスに変える組織風土があると思います。
薄井TLの活動の中で私の印象に強く残っていることがあります。発表の最後の「メンバーからの声」の中に、「薄井TLといると楽しい」というコメントが入っていました。これ以外に「メンバーの声」として、「信頼できる」などいくつも良いコメントはありましたが、「楽しい」というのは一番良い褒め言葉であり、そういう信頼関係ができているのは、素晴らしいと思います。

JMA
「楽しい」という言葉の裏側には、苦労はあるけれども苦労する甲斐があるということが隠れている気がしますね。

村上
私の若い頃は厳しい上司が大勢いました(笑)。今の人たちは昔と同じやり方では通用しませんね。私も部下と話をするのですが、一人ひとりと向き合ってマネジメントしないといけないと感じています。薄井TLの良いところは、自分の若い時は「こうだった」けれど、今の人たちに合わせると「こうなんだよな」と何回も模索して取り組んでいます。発表の中でも紹介していますが、「そういうところがこれからのマネジメントに必要なところではないか」。と私は彼の発表を聞いてそう感じました。

JMA
ある会社で、「難しい時代になったぞ」と言われ、どういうことかと聞くと、「昔は叱られて人が育っていくことが当たり前の時代だったから、何か間違いがあればその場でバンと叱れた。今それをやるとパワハラとか言われてしまうぞ」と。マネジメントも難しくなってきましたね。

小林
薄井TLも叱るべき時は叱っていますが、その点はきちんとメンバーの将来を考えて相手に合わせた指導をしているので信頼関係につながっていると思います。

JMA
技術や技能の伝承は、皆さん一生懸命やりますが、マネジメント技術の伝承はなかなかできません。
薄井TLのお話を伺っていての印象なのですが、相談しやすい頼れる兄貴といった感じで、ガンガン厳しいだけでなく、優しい面もあるし、きちんと自分たちを目配り、面倒をみてくれる安心感・信頼感のあるリーダーだと思うのですけれど、いかがですか?

小林
まさにその通りだと思います。

村上
チームリーダーというのは頼られないとダメなので、その模範を示してくれています。

JMA
薄井TLが、朝、職場に行った時に何か心がけていることはありますか?

薄井
基本、毎朝全員と話をするようにしています。挨拶はもちろん、例えば、奥さんが妊娠され具合が悪いという話を聞くと「奥さんはどうしている?大丈夫か?」など、人にもよりますが、時にはプライベート的なことも話をしています。このようなことを積み重ねた結果、メンバーからいろいろ話をしてくれるようになりました。「実はこういう理由でこの日は休まなければならないのですが、しっかりやるので休ませて下さい」と正直に私に言って来てくれます。そういったメンバーの裏事情もわかった上で仕事も進められることができるようになったことも、私のマネジメントの強みだと考えます。

JMA
今回、手当も含めて体制を変えるという意味では、上司や社長、本社にも掛け合っています。とても行動的ですが、最初に部下から相談があった時や、これはもう自分が動いていかなければいけないんだという時に、上司や会社には素直に相談できましたか?

薄井
はい、できました。他の会社のことはあまりわかりませんが、自分の会社は相談しやすい風土であると思います。上司にも私の職場の状況をわかってもらい、変則勤務を強いることでメンバーのモチベーションが下がって効率が悪くなる可能性もある。「それを打破するためにはインセンティブをしっかりしなくてはならない」という私の言葉をひとつずつ真剣に聴いていただき理解をしてくれました。このように上司とは絶えずコミュニケーションは取れていたので、その後の部長や社長と話もスムーズに取り計らっていただくことができました。

JMA
そういう意味では上司の懐の深さも大事ですよね。

村上
今回の発表に関しては設備投資のタイミングがずれたことにより、保有生産能力設備で見込んでいた以上の生産をこなせばなりませんでしたが、メンバーや薄井TLに負担をかけてしまいました。まさに大変な時期でしたが、そういう危機感があるが故に、メンバーとも一体感を持って対応することができたという気がしています。

JMA
良い方の危機感の共有ですね。
ただ、聴講していた参加者からすると、第一線監督者・リーダーの方が本当に会社のトップまで掛け合って、賃金まで折衝することは到底想像つかないですよね。その相談があった時に小林部長はいかがでしたか?

小林
確かに第一線監督者の立場でありながらも会社全体の視点で考え、尚且つ行動していることに驚き感動しました。
その行動の根底に自分の実装チームは、製造工程の先頭職場なので後工程には絶対迷惑をかけられないという強い使命感があったと思います。また、自分達が約束した生産計画を必ず達成しようとする意識も強くあると思っています。
今回の場合、生産を確保する手段として何ができるか考えた時に、古い設備での人海戦術しかなかったので、それを確実に成功させる必要がありました。そこで、メンバーのモチベーションアップのため必然的にインセンティブを出しましょう!という発想になりました。だから薄井TLも別に躊躇することなく社長に「こういう訳だからぜひお願いします」と提案できたと思います。

村上
白河オリンパスは、内視鏡などの医療機器に使われる基板のメイン工場ですので、私たちが基板供給できなくなったら他の工程やグループ工場が止まってしまいます。ひいては治療を待っている患者様にもご迷惑をおかけするかもしれません。メンバーにはそういう意識の下に「自分たちがやらなければならない」と。薄井TLは強い使命感を持って、一生懸命メンバーに思いを伝えてきたと思います。

オリンパスの理念・方針に基づく、“職場のあるべき姿”をメンバー全員で共有
キーワードは、メンバーとの「信頼」と、
自分達が作っている物に誇りが持てることの「やりがい」

薄井
発表の中でも紹介しましたが『白河オリンパス実装チームはこうあるべきだ』という職場の“あるべき姿”をつくってあります。「私たちが作っているものは何でしょう?医療に使うものです。だからそこにはもっと誇りを持とうよ」と村上社長はよくこう言います。私たちがしっかり部品を供給できないと「多くの患者さんが困る」、「自分の家族が患者だったら困る」ことは明らかです。日頃からこの様なメッセージがメンバーにも浸透していますから、今回のテーマも「絶対にやり切るんだ!」という考えで協力を得られたと思います。

村上
これはオリンパス本社の理念・方針でもあり同じ使命感を持って仕事をするように常日頃から心掛けていることです。

JMA
理念浸透というのがブレない軸ですね。それを常に皆さんに発信していく中で、メンバーの方々もそれは共感していただいていますか?

薄井
共感してくれていますね。私は今回の発表の中でキーワードとして「信頼」と「やりがい」の2つを出しました。メンバーとのつながりは信頼ですが、仕事のやりがいは、自分が作っている物に誇りを持つことだと思います。医療機器を作っているので、やりがいのある仕事であることを理解してもらうように私もメンバーに説明しています。

JMA
先ほどの職場の“あるべき姿”は、薄井TLが今の職場に異動して来て、疲弊した職場を見て掲げた“あるべき姿”なのですか?それもと、元々、今の職場にあったものなのでしょうか?

薄井
後者ですね。前任のチームリーダーが残していったものを私が引き継ぎました。オリンパスは前任者が“あるべき姿”をつくり引き継いでいくことが基本になっています。いきなり異動してきて全く新しいことはできません。しかし、2ヵ月くらい経った時にこの職場には何か変化するきっかけが必要だなと考えて、“あるべき姿”をブラッシュアップさせ取り組みました。

JMA
職場にあった理念の“あるべき姿”を、もう一度薄井TLの言葉や気持ちを込めて皆さんに伝えていったわけですね。

薄井
そうです。“あるべき姿”という言葉を使いましたが、実はこれが白河オリンパスの製造部全体に浸透し、各職場に“あるべき姿”があります。“あるべき姿”と現状のギャップを職場の課題に設定し、職場つくりに取り組んでいます。

JMA
「変化に対応するものづくりを追求し、挑戦する人材の育成と働きたい職場をつくる」ということですね。

小林
製造部の理念にある「働きたい職場」という言葉は、薄井TLの要望で入れました。そして製造部全体でこの言葉の意味を理解して活動を展開しています。

JMA
「働きたい」というのは1人称で、それぞれによって働きたい動機が違うわけですが、それを共有しましょうと言うことですね。

小林
その通りです。“あるべき姿”は、初めに製造部全体で作成し、それを受けてグループの“あるべき姿”を作成し、そして更にチームの“あるべき姿”をつくります。上から下まで一貫して共通の考え方を示し、業務の軸がブレないように展開しています。

JMA
そういう点では、現場に一番近い存在で、影響力のある第一線監督者・現場リーダーの発信力というのは大切です。

受賞後、全社チームリーダー延べ400名と、現場作業者へ、
それぞれ発表報告会を実施
現場作業者に、チームリーダーの思い・考えが伝わりいい反応が!
経営トップからも全社へ受賞報告。ものづくりへの士気を高める!

JMA
今回最優秀事例賞を受賞されたわけですが、受賞結果を皆さんに伝えられて、周りの反応やご家族の様子などはいかがですか?

薄井
名古屋に一緒に行った上司と同僚にはその場で大変喜んでもらいました。村上社長には名古屋で“ひつまぶし”をご馳走していただき、初めて食べましたが、びっくりするくらい美味しかったです(笑)。
また、会社に出社した時の周りの反応がすごかったですね。みんなこの大会の偉大さを知っていたので「すごいな、自分の会社・職場が最優秀賞を取った」ということで、自分のことのように喜んでくれました。
家内も私の苦労を判っていたのですごく喜んでいました。子供も一時期あまりかまってあげられず、寂しい思いもさせましたが、「お父さんが賞状をもらってきた」と言ってうれしそうにしていました。きっと理解はしていないと思いますが・・・・

JMA
職場の皆さんには、薄井TLがいただいた賞ですが、職場の人たちと一緒に頑張ってきた成果ですから、そういった意味では良かったですね。

村上
私は、当日最後の投票結果を聞きたかったのですが、どうしても会社のイベントに出席しなければなりませんでした。午前中の発表を聞いて内心「一番良かったぞ」と思い、賞をもらえるかもらえないに関わらず「これで“ひつまぶし”でも食べてこい!」と言って、後ろ髪を引かれる思いで一足早く会場を出ました。帰りの新幹線がちょうど新白河駅に着く頃に「最優秀事例賞をもらえました」という電話の連絡を聞き本当にうれしかったですね。 
その後、会社に行き直ぐに「第一線監督者の集いで薄井TLが最優秀事例賞を受賞した」ということを館内放送で全従業員に報告しました。

薄井
私はまだ名古屋にいるのに、スマホに「おめでとう」というメールがどんどん入ってきました。なんでみんな知っているのだろうと聞くと、「臨時の館内放送が入りましたよ」と言われました。村上社長のご配慮だったのですね。

JMA
今回受賞されて、ご自身の中で意識が何か変わられたことはありますか?

薄井
周りからすごく注目されています。同じ立場の監督者が私のところに来ていろいろベンチマークするようになりました。最優秀賞を取った時はうれしいと思ったのですが、1週間くらい経つと「やっぱりこの賞って重いんだな」と思いました。だからこそ自分が第一線監督者としてちゃんと責務を果たさなければならないと意識が変わりました。なおさらメンバーに対する対応は深く考えながらするようになりました。

JMA
良い機会だから同じようなチームリーダーの人たちとコラボレーションして、相互に刺激し合っていくといいですね。

村上
薄井TLの取り組みはどの業務でも参考になる話なので、早速、チームリーダークラスを集めて何回か発表してもらいました。延べ400人くらいの従業員が聴講しました。

小林
その後、製造部門のメンバー全員に薄井TLから同じ発表をしてもらっています。その反響は、「チームリーダーがこういうことを考えていた!」「こういう思いで仕事を回していたんだ!」ということが作業者にも伝わって、相互に理解を深めることが出来ました。
普通だと当然マネジメントの話ですからマネジャー層に共有化することだけと思いますが、現場の作業者にも共有化したところ、意外とこういう考えでやっているという点が共感されたということで良かったと思います。

JMA
現場の作業者の皆さんにも話をされたというのは初めて聞きました。受賞されると上への報告や横への展開はよく聞きますが、下の現場との共有化の施策は弱いですね。今回が初めてされたのですか?

小林
いえ、継続して共有化しています。製造部内では定期的に全員対象の報告会を開催していて、いろんなテーマ、例えばQCサークルの優秀テーマ、改善事例、そしてマネジメント関連テーマなどを6ヵ月に1度報告する場をつくっています。

JMA
現場の方たちへのフィードバックは、他の発表会社にも参考になりますね。

村上
先ほどからのお話のように上と下の両方の情報の共有化が重要だと思います。2月にオリンパスグループの「生産革新総合大会」という、役員はじめマネジャーが一堂に集まる大会があります。そこの冒頭で製造部門の役員から、薄井TLと二瓶TL(第12回「第一線監督者の集い:福岡」最優秀事例賞受賞)が名誉ある賞を受賞したことをアピールしていただきました。「ものづくりの現場のメンバーが頑張っている」と会社のトップから話をしていただいて良かったかと思います。

JMA
一般的に、今までは、研究・開発や新事業にスポットが当たりがちでしたが、オリンパス様では、これまで以上にものづくりの現場を大切にして行こう!という経営トップからメッセージなのでしょうか。

重盛
オリンパスの社長もそういう考えで「ものづくりを支える現場の技能者育成が大事である」と言っていただいています。私達も担当事務局としてフォローしていただきますが、プレッシャーもありますね。
今回の白河も、また会津の事例にしても、彼らの取り組みはすばらしいと思います。しかし、決して自分一人のテーマではなく大勢の上司、同僚、そしてメンバーとの信頼関係やバックアップがあったから達成できたことだと思います。まさに組織力の成果です。トップの思いでもありますが、製造現場で一日中、立って仕事している人が報われるような、そして、よりやりがいを出して働きたいと思えるようなそんな会社にしたいですね。

JMA
薄井TLのようになりたいという中堅・若手の人たちがどんどん出てくると、それだけに元気になります。会社としてそこにフォーカスを当てて、皆さんのステータスを上げていけるといいですね。
薄井さんがこれから挑戦していきたいことや目指される監督者像はいかがですか?

夢は、自分の宝物-子供を働かせたい会社にする!

薄井
目指すところは、発表の最後にも言いましたが、自分たちの子どもを働かせたい会社にしたいです。自分の苦労は平気でも、子どもはやはり安心なところに預けたい。自分の宝物を預けられる会社にしたい。それが私の今の夢です。それが白河オリンパスであってほしいなと思います。それをするためには職場を成長させる第一線監督者がどんどん増えていくことが必要です。そういった人たちを増やすことに私の力が生かせれば良いと思います。

JMA
薄井TLに期待することはいかがですか?

小林
薄井TLは、将来社長になることを期待します。(一同笑)。もう一つ話しておきたいのは、第一線監督者のための資格試験CPFですが、薄井TLはすでに取得しています。第一線監督者として認められるためには、経験によるノウハウや人間性も大切ですが基本の知識も必要です。今後、薄井TLが中心になり、基本知識を身に付けるため資格試験CPFにも力を入れて、経験・人間性・知識を備えた第一線監督者の積極的な育成に期待します。

村上
私は白河オリンパス原籍の社員から社長に就任いたしました。地方勤務であっても努力すれば報われる、それはみんなの励みになっていると思います。彼もそういう一人になって欲しいです。現状に満足してこれで納まるのではなく、もっと大きなところに目標を持って自分の人間性を磨いて欲しいと考えます。おそらくこの賞をもらったことで本人はすごくプレッシャーを感じていると思いますし、周りからの目がすごいので、それをどう乗り切るかというのも初めての経験になります。きっとそれを乗り切った時にもっと大物になっていることを私は期待しています。

JMA
プレッシャーは感じるでしょうけれど、薄井TLらしさはなくしてはいけないので、薄井TLらしい姿を残しながら頑張っていただきたいですね。
薄井TLの活躍を見ているメンバーから第2、第3の薄井TLが育ち、伝承していって欲しいですね。

重盛
放っておいて人は育ちません。いかに「仕掛け」をしていくかが私の立場での課題です。みんなが明るく元気に働ける会社を創ります。「第一線監督者の集い」の企画委員の皆様とお話をするとすごく勉強になりますのでオリンパス社内だけで井の中の蛙にならないよう、JMA様には今後もいろいろな情報交換の機会のご支援をぜひよろしくお願いいたします。

JMA
本日は貴重な時間をありがとうございました。
今後の白河オリンパス様のご発展と、薄井TLのますますのご活躍を祈念しております。

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