日産自動車九州インタビューその2│人材育成に必要なビジョンカルテとは?

日産自動車九州 製造部 塗装課 係長 出口浩司様、製造部 シニアスタッフ 野田安則様にお話を伺いました。
日本能率協会の平井希実がインタビューします。
(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

人材育成に必要なビジョンカルテとは?

nk_d01平井
発表の資料を先ほど見せていただいたのですが、あの中でご自身が最も伝えたかったポイントはどこでしょうか。

野田さんと昨日、少し話していて、ビジョンカルテというところを出口さんは大事にしていたと伺いました。

出口
現場の監督者はみんな、それなりに思いを持って部下の育成をしていると思います。

だけど、何かにまとめて形にするものを作っておいた方がいいでしょう。

人間は100%記憶の中で動いているわけではありませんし、1人の部下だけを見ているわけでもありません。
長い年月をかけて人材を育成するとなると、ああいったビジョンカルテみたいなものが必要になってくるはずです。

講演のときもいろいろとそれについて質問を受けましたが、うまく答えられなかったかもしれません。

自分たちの業界は工長だと長くても一つの工程に3年ほどしかいないのです。
部下も途中で配属が変わります。
ビジョンカルテを基礎に持っていると、新たな工程へ移ってもそれが生かされるでしょう。
もし、別の監督者が来ても、その部署の人材がそういう育成をしているのかをうまく引き継げるのではないでしょうか。
その人間自身を育て、成長させるうえでも、大いに役立つと考えています。

野田
実は今まで使用していたシートを改善し、彼のビジョンカルテを応用した人材育成シートを新たに作成し今年から運用するようにしました。

まずは、35歳以下の組員全員の育成プロモーション計画を立てます。
新入社員から35歳ぐらいまではどういうふうに育成し、この時期にはこんなことを経験させるということをすべてまとめたひな形を作ります。

その通りに育成が進むかどうかは別にして、次の監督者が来てもどの組員がどの状態なのか、どこまで育成が進んでいるのかがすぐに分かります。
今年からこれを工場全体に広げてやるようにしました。

平井
ビジョンカルテはどういう経緯で始めようと思ったのですか。

出口
さっきも申しあげましたように自分は歴代人材育成に長けた上司の下でやらせてもらいました。

自分の工程の中にはいろいろな業務や課題があるわけで、それらは当然、達成しなければなりませんが、1人で走り回ったところで出きる事はたかが知れています。
指導員で代行していたときに、仕事に携わる部下をうまく使い、育成しながら動いてもらわないと成り立たないと感じたのです。

それで、『この人はこういう特性を持つけれど、こういう別のこともできたらもっとすごくなる』とか、『他の仕事も体験させてみたら成長するのではないか』とか、いろんなことを考えながら、役割分担を作るようになりました。
これは発表の中でも少し紹介したと思います。

役割分担は非常に重要だと考えています。

人にはそれぞれ長所も短所もあります。弱いところを伸ばして苦手を克服できるようにするとともに、長所である強いところをさらに伸ばしてやることが必要です。
本当に1人ひとりをしっかりとみていくことを忘れてはいけないのです。
そのうえで役割分担を大事にしながら考えていくと、1人ひとりのビジョンが開けてきます。

だから、1人ひとりのビジョンカルテをしっかりと作っておいた方があとで生きてくるのです。
それを見ながら自分で振り返り、これまでの接し方で良かったのかどうか考えています。

そのような中でビジョンカルテができてきました。

係長になって心がけていることとは?

平井
それが全社に展開され、大きな取り組みになりましたね。
そういう取り組みを経て係長になり、部下への接し方や気をつけていることに変化はありましたか。

出口
僕自身は自分のスタンスをこれまで、あまり意識してきませんでした。
だから、変わったかどうかと尋ねられても難しいところがあるのですが、指導員から工長、係長と進んでいくと当然、責任も重くなります。
部下に対する言葉1つを取っても責任が違いますから、その辺りの自覚はやはり変わってきたと思います。

今回の発表で「初心に返る」ではないですが、今まで忘れがちになっていたことが思い起こされました。

係長の下には工長がいて、工長が部下一人ひとりを育成しています。
係長の直属の部下は工長で、工長にとって作業者は直属の部下になりますからね。
ですから、係長になって個々の作業者に細かい指示をすることはまずありません。

でも、係長として部下一人ひとりを常に見ておかないといけないという思いを持っています。
直接指示をしなくても、それぞれの部下のことは常に意識するものです。
みんながちゃんと頑張っているのかなどは気にかけています。

係長は日常、4つの工程をパトロールで回ります。そうすると、先々でみんなが声をかけてくれますし、自分も声をかけています。
頑張っている姿を目にしますし、工長らから頑張っている人の話を聞かされます。
それが今はすごくうれしいのです。

平井
立場が上になって接する人数もすごく増えたと思います。
そんな中でとてもうまくやっているという印象を受けました。

nk_n02野田
彼が行くところは成果が出ています。
ということは、発表したようにいろいろな経験を生かして人を束ね、チームワークを醸成し個々の力を組織の力に育て上げるスキルが高いと判断します。
それで成果が出ているのでしょう。

工長はそれぞれ15人から20人ぐらいの部下を持ち、工長が率いる3つの組を出口さんが束ねる形になっています。

出口さんとしては末端の人にも指示してあげたいのだろうけど、工長の立場を考えたら飛び越えて指示を出しにくいわけです。

そこで、工長の立場も考えながら、末端まで声をかけ、きちんと働くところを見ています。
彼の今までの経験がそうさせているのではないでしょうか。

それが末端の組員からすると、係長がいつも見てくれていると感じ、モチベーションアップにつながります。
みんながそういうふうに思って「俺も頑張ろう」という感じになっていっているのだと思いますね。

出口
僕も若いころ、現場に係長が来てくれてちょっと声をかけてくれたら、うれしかったものです。
だから、そういう部分を大事にしようと心がけているのです。

次回に続く。

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